鉄はとても力強い物質だが、一定不変ではない。還元され素材になり、酸化し鉱物に戻る。あらゆる環境に応答し、安定した状態、平板化に向かう。 私は鉄の平板を自身の手と身体で曲げる。表面を腐食し錆付かせ、仕上げをした物体を 並べる。造形するときに火を使わずに曲げていく原始的な手法で制作をしていると、鉄と
律動していく感覚を持つことができる。錆びた鉄の姿は環境に応答した鉄なりの愛着を帯 びていくようにも見えた。 安定した面白みのない、余白になることはいつか思い出すことのできるように平板化し た思い出。愛着を持てる対外的なものにしか等身大を見ることはできない。ただその感覚 も、思い出して律動するだけだ。
愛着に応答することで等身大が振動する。逡巡する間隙。弱く、優しく、しなやかに。
2021/11/01髙松
威
鉄を素材として抽象彫刻を制作し続ける髙松による1年ぶりの個展となります。平面な鉄のプレートに錆の呼吸を施す手仕事は、まるで生命を誕生させるかのような雄大かつ繊細さを更に極めていきます。大型の作品は自身の腕と全身を駆使し、まるで格闘するかのように折り曲げ成形させていきます。身体と精神を研ぎ澄まし生まれる作品は深く見応えのある内容となります。
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