―親和と嫌悪― Affinity and disgust
平坦な豚真皮(Pigskin)を縫い合わせ、ヤニ色の半透明な彫刻を20年以上前から制作してきた。表層だけの空っぽの彫刻作品である。
そのあと、同じ素材を細長く裁断し煮込み、発泡スチロールで制作した型の上に乗せ冷却し、同じように空っぽの作品を続けてきた。
皮膚は外と内を遮断する。人なら内にある肉、骨、血液などを守るため。しかし、汗のように内から外部に、や皮膚呼吸のように酸素、二酸化炭素等を交換するものでもある。
薄っぺらな豚真皮作品は人との親和性にある。作品は人と同じ成分で出来ているため親和性は強く働くと考える。しかし同時に着飾った表象の下を覗かれたような嫌悪感も人に与える。「汗腺の痕跡など気持ち悪いので見たくない」など、あたかも自らの死を体験させられているように思えるのだろう。
近年、豚真皮素材の生産が中止になった
「親和と嫌悪」は蚕繭、真珠の素材へと移行した。この素材たちは「蚕繭―人工生物」、「真珠―生体鉱物」という両義的要素がある。自然であり人工でもある。有機体であり無機質体でもある。
そのような蚕繭や殻蝉で、特異な内空間を表象する。
子宮のように繭でおこなわれる変身という奇怪な状態が、時間と空間の特異性を感じる。
加藤隆明 2021•12